井植歳男のセールストーク

昔の経済ドキュメンタリーからはヒントが得られるので、好んで見ています。

 

今回取り上げるのはプロジェクトX三洋電機が洗濯機市場を開拓した際の話です。

 

開発秘話というのも非常に重要なのですが、最も重要な場面はそれ以外にありました。完成した洗濯機を売り始めた時の話です。

 

今まで見たこともない洗濯機の登場に、顧客の反応は井植らの予想以上に鈍く、売上は伸び悩みました。

 

新しい製品を売る際には顧客にその製品を評価する基準がないため、既存製品を売る以上の営業力が問われます。

 

井植が営業マン達に示したトークスクリプトは、次のようなものでした。

 

「主婦が一回の洗濯で使う労力を金額に換算すると25円かかる。洗濯機は1台270円であるため、13回で元が取れる」

 

この逸話を聞いて、営業の基本はいつも変わらないと思いました。そして、1つの会社においてこういう営業トークができる人は決して珍しくはなく、少し腕が立つくらいのレベルだと思います。

 

この営業を組織的に、社長のもとで徹底的にやることが難しいのです。井植氏が手本を示して、その通りやってみよう、と思わせるには、

部下との信頼関係に加え、わかりやすい説明が必要です。

 

その凄さは、技術者が「自分は井植さんのもとで働いて、良い技術者には、売ることもわかってないとなれないと感じた」と発言したことからも伺えました。

 

今や会社としては存在しない三洋電機ですが、井植歳男という人物は歴史に名を残したと言えるでしょう。